映画「カールじいさんの空飛ぶ家」感想

あらすじ

冒険家、チャールズに憧れる少年、カールは同じくチャールズに憧れる少女エリーと出会い、やがて大人になった彼らは結婚する。子供には恵まれず、「チャールズが消息を絶った伝説の滝”パラダイス・フォールについて「いつか二人で見に行こう」と約束するものの、願い叶わぬままエリーが亡くなってしまう。

悲しみに暮れるカールに追い打ちをかけるかのように今度は街の開発計画によって立ち退きを要求されてしまう。妻との思い出が詰まった家を手放したくないカールは、立ち退きを頑なに拒むが、

※立ち退きを迫る相手に誤ってケガをさせてしまい、立ち退かざるをえなくなってしまう。

そしてこれをきっかけに、妻との約束を果たす事を決心し、10297個もの風船を結びつけた家ごとパラダイスフォールに向けて旅に出る。しかし、飛び立った後で“お年寄りのお手伝いバッジ”を手に入れて自然探検隊員としてのランクアップを目指している少年・ラッセルが家に入り込んでいた事に気付く。

※以降、wilipediaより引用

感想:空の冒険譚にヴィランは必要だったのか?

微妙。じいさんと少年が空飛ぶ家で冒険に旅立ったのは面白かったけど、敵キャラとの対立軸が弱いというか、そもそも「じいさんが亡き妻との夢を叶える為に伝説の滝を目指す」という筋書きにの映画に、悪役(ヴィラン)が必要だったのでしょうか?

しかもカールじいさんと対立するヴィラン(チャールズ)は、カールじいさんが亡き妻と結婚するキッカケにもなった憧れの人。

チャールズと出会ったカールじいさんは最初こそ大喜びし、彼の招待を受け入れるもの、彼が自分達の旅に途中から同行した怪鳥(ケビン)を生け捕りにしうと狙っていると知り、彼の飛行機から逃げだそうとします。

…カールじいさん、その直前までケビンのこと邪険にして追い払おうとしてませんでしたっけ?

ケビンが親鳥だと知って情でも移ったのか、ケビンをチャールズから守ろうとするカールじいさん。

うーん、ここら辺がよくわからなかったというか、カールじいさんは、「憧れの人の願いを叶える」事よりも「親鳥と雛鳥の平穏を願う優しい人だった」という事?

憧れの人と出会ったら、「その人の役に立って気に入られたい」と思うのが、人間の心理ではないでしょうか(一応、チャールズが実は怖い人かもしれない姿を、カールじいさんは目にするので、それが心変わりするキッカケになったのかもしれませんが)。

この映画、チャールズの手下であるしゃべる犬が出て来た辺りから「亡き妻との約束を果たす為、家を風船で飛ばして伝説の滝のそばに住む」という物語当初の目的が「チャールズの魔の手からケビンを守る」にすり替わってしまった感があります。

いやそもそも「秘境の滝のそばに住む」というのはただ単に「空飛ぶ家」で冒険を始めるための口実に過ぎず、「チャールズとの対決が見所」という事だったのかもしれませんが、その割りにははただ怪鳥を生け捕りにしてかつて自分をバカにした人達を見返したいだけのじいさんであり、彼を倒したところでカタルシスはいまひとつです

チュールズは「冒険を盛り上げるために悪役は付き物だから出しとこ」な感じで取って付けたように出て来ただけのキャラクターという印象です。

悪役との対決を描くなら描くで、鳥の取り合いなんて地味な事をやってないで、もっとストレートにカールじいさんの行手を阻むヤツとの対立を描いてもいいのに…と思います。一応、チャールズはカールじいさんの家を燃やそうとする非道っぷりが描かれるので、カールじいさんはチャールズに対して個人的な復讐を成就してもいるのですが、チャールズがそこまでするのはあくまで「怪鳥ケビンを自分のものにするため」の手段であって、カールをどうこうする為ではなかったはずです。

物語の主軸が「空の冒険」から「怪鳥ケビンを巡る攻防」にすり替わってしまったのが、この映画の残念なところだと思いました。

そういう意味で、「敵との対立」をなしに「空の冒険」を描いた「魔女の宅急便」は名作だったのだなぁと思いました。アレも最後意味不明というか消化不良気味で終わるけどね…。

まとめ

冒険を描きたいのか悪役との対立を描きたいのが、いまひとつ物語の焦点が定まっていないという印象の映画でした。

前者にしては、物語のクライマックスはほぼとの決戦をテーマに描かれている。

後者にしては、悪役との対立構造が弱い。

…しかし私がそう思ったのは「物語の構造」を気にしているからで、そういう細かい事を気にしなければ「カールじいさんと少年と鳥(とついでに犬)の心温まる冒険譚」として楽しめるのかもしれません。

「なんだか行き当たりバッタリな映画だなぁ」という印象でしたが、本来「冒険」とはそもそもそういうものなのかもしれません。

 

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