夢を諦める事は死ぬ事と同じ
売れないミュージシャンは何故死んだのか
昔読んだ漫画の意味が昨日ようやく理解できました。
漫画と言ってもプロのものではありません。漫画専門学校が出版社に出している、生徒作品集の中ものです(体験入学か何かで貰った)
あらすじ
サラリーマン生活に疲れはじめていた翔は、大都会の真ん中で幼なじみのアキラと偶然再開する。
アキラのマンションに招待された翔は、アキラはミュージシャンだと聞かされ、彼の歌の入ったMDを渡される。
帰り道、翔がMDを聞くとそこに入っていたのは中学校の校歌だった。
一瞬ドン引きする翔だったが、アキラのヘタだが力強い歌声に次第に元気が湧いてくるのだった。
後日、MDのお礼に翔がアキラのマンションを訪れる。しかし、そこにいたのはアキラではなく、幼なじみのリョウコだった。
不思議に思った翔がリョウコに話を聞くと、今二人は付き合っており、アキラは歌ってはいるが歌でお金は稼げておらず、今のアキラの職業は、言わば「リョウコのヒモ」なのだという。
普通ならここでアキラに幻滅するのかもしれないと思いつつ、自分の夢にまっすぐなアキラに翔は憧れを抱くのだった。
…一方その頃、アキラはバンド仲間を一人また一人と失っていった。
そして最後の仲間も「いつまでも貧乏生活していられないんだ。パソコンの仕事の方が順調だから」という理由でバンドを去っていった。
仲間を全て失ったアキラは、夢を諦め、リョウコとも別れて就職し、自立しようとする。
…しかし、その直後、アキラは就業中に事故に遭い死んでしまうのだった…。
訃報を聞き悲しみに暮れる翔とリョウコ。
一年後、二人はアキラの墓の前で再開を果たす。
翔がリョウコにアキラの歌の入ったMDを聞かせると「アイツの歌…スッゴく評判悪かったんだ」とリョウコは懐かしむように言った。
翔は今もアキラの歌で励まされており、仕事で大事なプレゼンの前には必ず聞いていた。「アキラは今も僕を支えてくれてるよ」とリョウコに打ち明ける。
「私…どうしてもっと応援してあげなかったんだろう…」と後悔するリョウコに翔は「してたよ、十分」と言い、リョウコは涙を浮かべながら頷くのだった。
感想
読んだ当時(13年位前かな…)は面白いと思ったけどどこにどう感銘を受けたのかうまく言葉にする事ができなかった。
※なお、うろ覚え記憶なので登場人物名などは違っている可能性があります。
今になってようやく分かった。私が本作に感銘を受けたのは
- 夢を諦める事は死ぬ事と同じ
- 大衆を満足(感動)させる事はできなかったアキラだが、身近にいる友の事は大好きな歌で元気づける事ができた。
その2点だったのだ!
…勿論、現実には夢を諦めたからと言って死ぬ事はほとんど(自殺でもしない限り)ないでしょう。
しかし、身体は死ななくても、心が死んでしまうのです。
アキラが唐突に死んでしまったのは偶然ではなく、彼の心の死を暗示していたのです。
それと同時に「就職してお金を稼いで自立する」という「一般的に正しいとされている事」が必ずしも個人の幸せと結びつかない事も示唆しています。
夢に破れ、自立もままならなかったアキラはしかし、大好きだった歌で身近な友の小さな幸せに貢献する事には成功しました。
それがアキラの…というより、本作の凄いところでした。
人生、夢破れても、うまく生きられなくても、「身近な誰かの小さな幸せ」に貢献できればそれでいいのかもしれません。