本当は恐いマギレコ最終回
アリナは魅力のないラスボスだったのか?
アプリの方は第2部も完結した「マギレコ」。1部はアニメ化もされ、何故かアプリ版とは違う結末を迎え、バッドエンドになったあげく尺も足りておらず、アニメ版のレビューでは実質のラスボスであったアリナについて「ラスボスとしての魅力は感じませんでした」と書く人まで現れてしまいました。
しかしアリナは本当にラスボスとして魅力のないキャラだったのでしょうか?
実はアリナに着目するとアニメ版マギレコの本当の怖さが見えて来るので、それについてこの記事では解説したいと思います。
本当は恐いアリナの結界
ソウルジェムが濁り切ると魔女化してしまう魔法少女たちですが、マギレコ時空では「神浜市」という特定の町に限り、彼女たちはソウルジェムが濁り切っても「魔女」にはならず、穢れを身体の一部に移し替えることで「ドッペル」を出現させ、ソウルジェムを浄化する事ができます。
それは「マギウス」と呼ばれる3人の魔法少女たち「ドッペルシステム」を作成し、その結界を神浜市に張っていたためです。このマギウスの一人がアリナであり、結界を張ったのもアリナです。
彼女もまたこのシステムによって自らのドッペルを呼び出し、使役する事ができるのですが、このドッペルがウイルス――それもHIVを模していたため現在は修正――の姿をしているのはyoutubeでも語られている有名な話です。
そして彼女が張った結界。
一見、ただ六角形が規則正しく並んでいるだけに見えますが、それは表面的な見方でしかありません。これについて言及する人は(私の見た限りでは)誰もいなかったのですが、恐らくは結界のモデルもウイルスです。何故なら「ウイルスの細胞」は顕微鏡で覗くと六角形が綺麗に並んだーーつまりこの様なーー姿をしているからです。
はい。もうここまで話せば私の言いたいことは分かりますね?
そう、アリナのドッペルがウイルスならば、彼女が張った「ドッペルシステムの結界」もまたウイルスが元ネタだということです。
まさに「毒を持って毒を制す発想」と言いますか、魔法少女たちを魔女化から守ってくれていた結界の姿が「綺麗な模様の描かれた魔法陣」ではなく「ウイルスの細胞」というところがいかにも「まどマギの外伝」って感じっすね(^_^;)
本当に恐いアリナのドッペル
アニメ版だとエンブリオ・イヴと一体化し、いろは達にやられて死んでいったアリナですが、アプリ版ではイヴの被膜をまとい、いろは達と戦ったものの死んではおりません。
アリナの生死を分けたものはメタ的に見てしまえば「商業上の都合」によるところが大きいのかもしれませんが(アニメは1部で完結なので彼女を生かさなくても良いが、アプリ版では今後も彼女の亜種を出すためには生存させておいた方が都合が良い)、ストーリー面に差異を見出すのであればそれは「ドッペルの設定の違い」だと思います。
というのも、アニメ版だと「発動させ過ぎるとドッペルが暴走して魔法少女を乗っ取ってしまう」という設定があり、魔法少女がドッペルに乗っ取られている時は顔に白い仮面が貼り付き、制御できている時は素顔という演出が度々登場しましたが、アプリ版にはこの設定はありません。
アニメだと最終回で唐突にアリナが「アリナのドッペルを全人類に寄生させて魔女化させる――魔法少女と同じ運命を背負わせる」と言い出したわけですが、果たしてこれは本当に彼女自身の願いだったのでしょうか?
彼女もまた魔法少女の運命を知らされないままキュウべぇと契約してしまい、「魔法少女は魔女になる」と知った時はキュウベぇを踏み殺すほど激怒し、魔女になりたくないが故に灯花&ねむと手を組んでマギウスになったにも関わらず、最終回で突然自ら望んでエンブリオ・イヴと融合して魔女になるのは変ではないでしょうか?
アニメ版には「ドッペルを使い過ぎた魔法少女はドッペルに人格を乗っ取られる」という設定があり、アニオリキャラの黒江は最終回直前でドッペルからの精神攻撃で弱り切ってしまい、いろはの説得も逆効果になり自ら魔女となる道を選びました。
アリナのドッペルが「ウイルス」だという事は上述しましたが、ウイルスというのは普通の生物とは違って、自力での増殖ができず、生きている他者の細胞に寄生することで自己増殖できるようになります。
彼女もまたドッペルを発動させている内に黒江の様にドッペルに人格を半ば乗っ取られてしまい、「『他者に寄生し自己増殖する』というウイルスの性質を自分自身の願望だと思い込んでしまった」のではないでしょうか?
その根拠に、彼女がイヴと一体化する間際の顔は半分ですがドッペルの白い仮面が覆っています。
彼女は最後に、「ばいばいマギウス、ばいばい灯火ねむ、ばいばい、アリナ・グレイ!」と叫んでイヴと一体化(=魔女化)してしまうのですが果たしてその声は本当に彼女自身のものだったのでしょうか…?
「ばいばい、アリナ・グレイ」
そう言ったのは本当は彼女ではなく、彼女のドッペル――ウイルスの声だったかもしれません。
はい、ここまで書けば私の言いたいことももうお分かり頂けますね?
「アリナのドッペルに寄生されて魔女化してしまったその犠牲者一人目は他でもない、アリナ自身だった」という事です…。
これだけ書くとなんだかしょうもない彼女ですが、OPでは美術部の後輩であるかりんに向けて微笑んでいたり、かりんの愛読漫画「マジカルきりん」を手元に置いていたり、かりんへ自分の絵を送りつけた伝票に「Good Luck!」と書いていたりと他人――というか、かりんに対してはちゃんと愛情を抱き、幸せを願っていたのだという事も分かります。(アニメ版ではモブ扱いでしたが、かりんもまた魔法少女です)。
※ちなみに「マジカルきりん」のカットは「浅き夢の暁」第3話ーーつまり最終回1つ前の話の冒頭で本当に一瞬だけ映るので、見落とした方はこの機会に探してみよう!(笑)
アニメ版は単体では物足りない内容でしたが、「アリナ」はなかなかぶっ飛んだキャラだったのではないでしょうか。
余談:本当に脆い女同士の友情…
最終回でもアリナの話でもありませんが、OPで「運命の二人」と言わんばかりにいろはとくるくる回ったり寄り添って寝ていたりした黒江が最終的にはあっさりといろはを裏切って魔女と化してしまう描写も好きというか結構リアルだったと思います(^^;)
セーラームーンにしろプリキュアにしろまどマギにしろ他でもないマギレコにしろ、この手の作品だと何かと美化させれがちな「女同士の友情」ですが「残念だけどそんなに美しいことばかりでもないよね」というのもちゃんと描いたアニメ版は、その点に関してはなかなか面白かったのではないかと思います。
※画像は全てAmazonプライムより。