傑作アニメ「慎重勇者」が売れなかった理由を慎重に考察する

皆さんは知っているかしら? 「慎重勇者」という伝説のアニメの事を(好きなyoutuberさんの口上のマネ)

慎重勇者の画像

出典:http://shincho-yusha.jp/ (C)土日月・とよた瑣織/KADOKAWA/慎重勇者製作委員会

本作は2019年に放送された「ライトノベル」が原作のファンタジーアニメで、最近流行(らしい)異世界転移ものの一つです。

異世界転移ものとは現代日本の若者が異世界に召喚されるor転生し最強チートっぷりを発揮するという作品群のことです。

本作もそんな流れの作品の1つで、日本人男性である竜宮院聖哉(りゅうぐういんせいや)が女神リスタルテに異世界「ゲアブランデ」を救う為の勇者として召喚され、魔王を倒すために奮闘します。

「男の勇者が魔王を倒して世界を救う」というのはファンタジーの王道中の王道で、そこだけを見ればあまり新鮮味は無いのですが、その勇者が「ありえへんほど慎重」なため、数々の笑いとドラマが巻き起こるのが本作の見どころです。

また、最後には良い所を見せて「ホロリ」とさせるという点では「お話づくりのお手本」のような作品でもあります。

「面白いかつまらないか」と聞かれたら間違いなく「面白い」部類に入るのですが、残念ながらこのアニメはあまり売れなかったらしいのです。この記事ではその理由を慎重に考察してみました。

面白かった点

ギャグ

完璧超人な上に色々極端でぶっ飛んだ行動と言動を繰り返す聖哉に対し、常識人で等身大なリスタルテの反応(ツッコミ)が愉快。

聖哉たちの稽古をしてくれる神様たちが愉快。

個人的には聖哉に稽古をしていたはずが、あっさり乗り越えられてしまい、聖哉のことがトラウマになってしまった剣神セルセウスがとくに面白かった。

シンプルで分かりやすい世界観

基本的にはファンタジーの王道展開なので作品世界にすんなり入って行ける(ワケの分からない専門用語等がほぼない)

男性向け作品なのに、時々少女漫画のような描写が入るのが愉快。

キャラクターの心理描写が丁寧で、誰が何を思っているのか分かりやすい。

クライマックスにつながる伏線が随所に散りばめられており、一度全話を見た後、もう一度1話から見直すと様々な発見があり、視聴2週目が更に楽しい。

キャラクター達の心理描写が丁寧

筆者が本作を見る直前に見ていたアニメが「魔女の旅々」だったのですが、そちらはキャラクターの心理描写がいまひとつでした。しかし本作はキャラクターの心理描写が丁寧で、「誰が何を考えその行動に至ったのか」というところが分かりやすく、登場人物たちに共感しやすかったです。

惜しかった点

「勇者が慎重過ぎる」以外は王道過ぎる世界観とRPG的なノリ

これは長所の裏返しでもあるのですが、「勇者が慎重過ぎる」以外の展開は王道過ぎて若干食傷気味ではありました。神々が世界を救おうとするのも、魔王が人間を殺そうとするのも、「ファンタジーのお約束だから」以外の意味や意義を見出せなかったのです。他のファンタジーにはない、本作独自の世界観を魅せることができていればより面白い作品になったのかもしれません。

また、「スキル」だの「経験値」だの「ステータス」だの、ノリが始終RPGのそれで臨場感が薄く、真剣に世界を救おうとしているというよりは、VRゲームをクリアしようとしている様に見えてしまいがちでした。前半のギャグ展開はそれ故にコミカルに見えたという利点もあったのですが、終盤のシリアス展開ではむしろ怒涛の展開をかすませてしまう要員に…。

露出度の高い女性キャラが多く、女性が見るのには若干キツイ…かもしれない

男性向け作品なので、男性視点で見ればむしろこれは長所かもしれませんが。魔王を倒す秘儀を習得した稽古の描写がお色気ギャグで済まされてしまった為、クライマックスの盛り上がりに欠ける一因になったかなと思います(シリアスな場面の必殺技なのだから、シリアスに習得しても良かったのではないかと…)

聖哉とリスタがゲアブランデを救わなければならない必然性が薄い

聖哉もリスタもゲアブランデの外からやって来た人間or女神であり、彼らがゲアブランデを救わなければならない絶対的な理由がとくにないんですよね。「『世界を救う』なんて大義名分に命を懸けて戦える人なんていない」という理屈は最もで、本作でもそれを意識し過ぎたのか、最後は「聖哉とリスタルテの愛の物語」的なところに行きつきました。

最終的には魔王が神をも殺せる武器を作ったので、聖哉はリスタルテを守るために一人で魔王討伐に向かうのですが、この時リスタルテは女神の親玉からはっきりと「危険だから任務を放棄していい」とも言われています。勿論リスタはそれを断って、聖哉を守るべく、魔王討伐に自身も向かいます。

それはそれで感動的ではあったのですがその反面、「二人にとってゲアブランデを絶対に救わなければならない理由はとくになかったのだ」ということが浮き彫りになってしまい、モヤモヤしてしまいました。

「救う」のが自分の住む世界であれば、必然的に自分や愛する人達の命や未来をつながることに繋がるのですが…。聖哉にとっても、リスタルテにとっても「救う世界がゲアブランデでなければならない理由」をもっと明確に出来ていたら本作の評価はもっと上がっていたのかもしれません。

聖哉は勇者である前に日本人なので、日本人男性っぽさをもう少し描いて欲しかった。

聖哉が「ありえへんほど慎重」なのが本作の見どころであり、彼がどうしてここまで慎重なのかその理由は終盤で明かされます。しかし、そもそも彼は勇者である前に日本人男性であるはずなのですが、その設定は黒目で黒髪・おにぎりを好むという外見的特徴と食の好み以外の面では機能していませんでした。

用心深い敵のさらに上をいく慎重さはほとんど戦争状態のゲアブランデでは有効ですが、平和な現代日本ではほとんど邪魔にしかならないと思うのですが…。勇者ではなく、日本人としての彼はどんな人物だったのか、そこをもっと掘り下げてくれれば、彼に共感できる人が増えたのかもしれません。

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