まどマギの外伝「たると☆マギカ」感想

まどマギの外伝作の一つである「たると☆マギカ」を読んだので感想をば。

たると☆マギカ概要

©枡狐・蛙空・Magicaquartet

「たると☆マギカ」はいくつかある「まどマギ外伝作」の中で唯一史実上の人物「ジャンヌ・ダルク」を主人公に据えた漫画作品で、平凡な農家の娘だった彼女がキューブ(=キュウべぇ)に出会い、魔法少女としてフランスを救う旅に出て災厄のもとであるイザボーを倒し、火刑で死ぬまでを描いています。

全5巻。

感想

名前と悲惨な最期を迎えたらしい事しか知らない過去の偉人、それが筆者にとってのジャンヌ・ダルクでした。

そう、本作を読むまでは…。

本作はある程度史実(15世紀のフランス)に基づいて描かれているため、作中でも度々その説明が入ります。

いきなり難しい説明をされても内容があまり頭に入って来なかったなため、you tubeでジャンヌ・ダルクとその宿敵イザボー・ド・バヴィエールの動画を見て予習、復習(?)しながら本書を読みました。

農家の娘に過ぎなかったジャンヌ・ダルクがイングランドに侵略されるフランスの危機的状況を覆せた理由について「(キリスト教に由来する)天使達がどう戦えば良いか教えてくれたから」と答えたのは史実の様です。

これ自体驚きで、史実ではあっても本当に事実なのかは信じがたいところですが、その(彼女に戦い方を教えたという)キリスト教の天使達をキュウべぇに置き換えたのが本作と言えるのかもしれません。

そのえげつない所業から作中でも作外でも蛇かつの如く忌み嫌われているキュウべぇですが、タルトからは「天使様」と呼ばれ、慕われています。

タルトというのは他でもない「ジャンヌ・ダルク」の事で、彼女が文盲だったため、姓のダルクをタルトと書いた事に由来するのだとか(というか、彼女の正式な姓については諸説あり真相は不明との事です)。

リズ(本作の最重要人物の一人。史実上のではなく、恐らく本作が創作した人物だと思われる)とキュウべぇはフランスを救う英雄になる魔法少女としてタルトに目をつけましたが、タルトは魔法少女になるつもりはありませんでした。

しかし妹が野盗に狩られて死んでしまった事で、魔法少女になる決意をします。この時のキュウべぇは「何でも良いから契約しろ」と迫るのではなく、「ここで妹を蘇らす事はできるけど、また同じ事が起こるかもしれないし、次は別の家族が狙われるかもしれない」と慎重に願い事を選ぶよう助言しており、妙に優しく見えます😅

キュウべぇの助言もあってか彼女は「妹の復活」ではなく、「フランスに光をもたらす力を!」と願います。

こうして彼女は魔法少女になったのでした。

その後仲間達と戦い続け、フランスを救うために必要な儀式の一つであったシャルル7世の戴冠式を行い、彼を王に導いたタルトでしたが、イザボーの娘との戦いでリズを失ったショックで戦意喪失したところを捕虜として捕まってしまいます。

彼女が捕虜として捕まってしまい、身代金も支払われずシャルル7世から見殺しにされてしまったのは残念ながら史実です。

全く酷い話であり、感情を持たないゲス野郎あのキュウべぇでさえ、捕虜として投獄された彼女に寄り添い、同情するかのような素振りを見せています。

©枡狐・蛙空・Magicaquartet

たるとマギカ5巻より一部画像引用。

あのキュウべぇにさえ「ひどい」と言わしめるイザボーやシャルル7世の所業よ。まぁ、本作においてイザボーを魔法少女にして事態を悪化させたのはキュウべぇなので、彼のマッチポンプではあるのですが…。

現実に捕虜として捕まった彼女には寄り添ってくれる相手さえいなかったのかもしれない…と思うと、キュウべぇがなんだか凄くイイヤツに思えるのでした😅

願い事を叶える時といい捕虜になった時といい、キュウべぇがタルトに対しで妙に優しく接するのは、彼自身、彼女に対して「自分の予想を遥かに超える“化け物”になってしまったイザボーをタルトに倒して欲しい」と期待していたからでした。

この後、なんやかんやあって(それは是非読書様の目で確かめて欲しい)宿敵イザボーを倒したタルトでしたが、彼女のソウルジェムは限界を越え、グリーフシードの浄化も受付なくなり、後は魔女化を待つばかりとなってしまいました。

魔女になってフランスに災厄をもたらす前に、彼女は魔法少女として火刑を受け入れる決意をします。

いつもは願いを叶える立場でありながら、タルトに願いを叶えてもらったキュウべぇは、彼女の意思を受け入れ、彼女の魔女化を望まず、彼女の仲間達とともにそっと彼女の最期を見届けたのでした。

「まどマギ」シリーズにおいては災厄の元凶とも呼べるキュウべぇですが、そんな彼もタルトにとっては本当に「天使」だったのかもしれません。

そんなわけで、フィクション性の強い「まどマギ」の世界観を踏襲しつつ史実を交え、敵として描かれがちなキュウべぇもほぼ全面的に味方であり面白い作品でした。

強いて苦言するなら、尺の都合もあったのかもしれませんが、イザボーは史実では王である夫のDVや当時の王族の厳しい状況(女の価値は子供を産む事だけ)により精神を病んでしまったらしいのですが、その事についての説明や描写が本作には一切無かった事が少し残念かもしれません。

私は電子書籍で読みましたが、紙の本で読む事を想定されているため、見開きページが見辛かったです😫。本棚が許すのであれば紙の書籍で読む事をオススメします。

…しかし、現実のジャンヌ・ダルクはキュウべぇの力無しで偉業を成し遂げたわけで、本当に天使の声を聞いたのでしょうか?

まさに「事実は小説(漫画)より奇なり」ですね💦


Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です