ウタは救済の魔女⁉ワンピースFILM RED感想
はじめに断っておくと筆者はワンピースについてあまり詳しくありません。
原作漫画は単行本7巻まで読み、映画は4作見た程度です。普段のアニメはほぼ見ていません。「悪魔の実を食べた者は実の名前に応じた特殊能力を得る代わりにカナヅチになる」という超基本的な設定を知っている程度です(^^;)
…そんなわけで私はワンピースが好きでも嫌いでもないのですが、身内にワンピースがめっちゃ好きな奴がいて、その人物が「おごってくれる」というからのこのこついて行って「FILM RED」を見ました。
結果。
そんな筆者でもこの映画はとても面白かったです!
というわけで、感想をつづります。以下、ネタバレ有なので閲覧は注意してください。
本作を見た人向けネタバレ感想
映画が凄く面白かった理由の一つはヒロインにしてラスボスのウタというキャラが凄く濃いぃキャラだった事です。
ウタについて筆者が一言で紹介するなら「まどマギの魔法少女として出て来そうなタイプ」です。
世界中の人達を自分の歌で幸せにすることを夢見ていたが挫折し、絶望のあまり暴走、最終的には異形の怪物(魔王)と化したその姿は「まどマギ」に出て来る魔女そのものという感じでした。これで魔女文字演出が有ったら完璧でした。
(注意:あくまでその様な解釈も可能、という話がしたいのであって、パ●リだと言いたいわけではありません)
まぁ、このシーンについては私以外にも「まどマギっぽい」と感想を漏らしていた方がいたので制作陣ももしかしたら多少意識していたのかもしれません。
…というか、地球(?)上のほぼ全ての人の生命を回収して自分の望む新時代(=天国)に連れて行こうとしたウタの行動はやっぱり「まどマギ」に出て来た「救済の魔女」とやろうとしていた事はほぼ一緒だと思います。
ただし、「救済の魔女」は「何故地球上の生命を自分の創り出した天国に連れて行きたいのか」「彼女の望む天国とはどの様なところなのか」「天国に連れて行った人達をどうしたいのか」という事については作中で一切描かれませんでしたし、裏設定としても語られることがありませんでした(というか「救済の魔女」の設定そのものがほぼ裏設定という形で、作中ではなく、公式サイトの魔女図鑑で語られた程度でした)。
希望を抱いた魔法少女の挫折までは描かれるが、挫折した魔法少女の成れの果てである「魔女の内面については描かれることがない」というのが「まどマギ」の数少ない欠点の一つです(「叛逆の物語」を除く)。
その点、ウタは内面描写もすごくしっかりしていて、「何故挫折してしまったのか」「挫折した後彼女は何を思ったのか」「何故みんなを自分の望む天国に連れて行きたいのか」「連れて行ってどうしたいのか」「彼女の望む天国とはどの様なところなのか」というところまで説得力を持って描かれていたので凄く面白かったです。まさに「痒い所に手が届く」感じでした。
また、歌というか音楽をテーマにした東アニ作品に「スイートプリキュア」もありますが、あれより遥かに歌(≒音楽)と物語の結び付け方がうまくなっていたと思います。
スリプリでも「明るいメロディが流れると人々が幸せな気持ちになり、暗いメロディを流すと人々が不幸な気持ちになる」という描写があるのですが「何故そうなるのか」という事についての説明や心理描写が一切なかったんですよね。
本作ではウタが歌うことによって様々な効果が起こるわけですが、それらについてもちゃんと説明がされていたので良かったです。
とくに「暗い音調の歌を歌うとラスボスの魔王が復活する」という展開は割と「スイートプリキュア」そのままだったと思うのですが、スイプリだと「不幸のメロディを流すことで不幸な気持ちに捕われた人々の負の感情を糧にラスボスが復活する」という流れだったのですが、「FIRM RED」では「楽譜そのものが呪いであり、それを歌うことで魔王が復活する」という流れでした。個人的に、暗い音楽を聞くと人々が(魔王が復活するほどの)不幸な感情に捕われる、というスイプリの描写に今一つ説得力を感じなかったので、いっそのこと楽譜そのものを「魔王復活の呪文」にしてしまった「FIRM RED」の方が説得力があると思いました。
ルフィとの描写も微笑ましくて良かったというか、「こんな幼馴染がいたら確かにお互い楽しかっただろうなー」と思えました。
幼い頃、二人はよく勝負していたのですが、お互い「勝ったのは自分だ」と思っており、認識に齟齬があったんですよね。その「認識の齟齬」も説得力のある描写で説明されていたので面白かったです。
子供の頃はポカポカと殴り合いのケンカもした事があるっぽい二人ですが、お互いある程度大人に近づいた今となっては、ルフィもウタに(手加減しても)殴ることができなくなったという描写に若干切ないものも感じました(これについては「ルフィが本当はウタが悪いワケではないと知っていたから殴らなかった」と解釈する声もありますが、もしもウタが男だったら、ルフィも暴走したウタを止めるために殴っていたのではないでしょうか?)。
ワンピースをよく知らない私には「登場人物が多過ぎて誰が誰だかよく分からない問題」もありましたが、それもほとんど問題にはなりませんでした。
というのも、本作の肝はルフィとウタ、シャンクス3人の人間関係であり、その描写がほとんど完璧だったからです。
赤髪のシャンクスは「ここぞ」という場面で登場しますし、ウタが彼の事を「パパ」や「お父さん」と呼ばず「シャンクス」と名前で呼ぶのも伏線になっていました。
(私の深読みし過ぎかもしれませんが、ウタの髪色が半分赤で半分白(銀?)だったのも彼女とシャンクスの本当の関係を暗示していたのかもしれません)
強いて不満だったところを述べるなら、ウタの育ての親であるゴードンが「音楽を愛する者として魔王が復活する楽譜を消す事ができなかった」と発言したところですね。「いや、自分の国を滅ぼした禁断の楽譜なんだからそこは抹消しろよ」と思いました(^_^;)。そこは「魔王の呪いなのか、いくら抹消しても復活するので地下深くに封印するしかなかった」という設定等の方が説得力があったかなーと思います。
また、最終的にウタが死んでしまった事にはモヤモヤしました。ルフィとシャンクスの説得で彼女は自分の過ちに気づき、それ故に自分が助かることより歌ってみんなを元に戻すことを優先するという展開だったので仕方なかったのかもしれませんが、暗に「(重大な)過ちを犯したものは死んでその罪を償わなければならない」と言われているようで、不幸な生い立ちだったウタにそこまで背負わせてしまうのはちょっと酷じゃないかなーと思いました。
ルフィとウタとシャンクス、和解した3人が笑顔でお互いの手を取り合う姿が見たかったですね…(T_T)
そんなワケで不満点がなかったワケではないけれども、「FIRM RED」は「ワンピース」にあまり詳しくない私でも存分に楽しめる名作でした。
あと個人的に地味に嬉しかったのは、ウタの声優さん(歌唱パートはadoが担当しているため、演技パート)がセガのぷよシリーズでドラコケンタウロス役としてお馴染みの名塚佳織さんだった事です。
守備範囲が狭い私にとっては、ドラコ以外で名塚さんの演技を初めて聞けたので良かったです。
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