セーラームーンCosmos前編/後編感想
高橋知也監督、ありがとう。
言いたいことは色々あるけど、まず真っ先に言うべきことは「高橋監督、ありがとう」です。
あの、後半になればなるほどどんどんワケわかんなくなっていく原作を、うまくかみ砕いて映像化してくださいました。
前後編を一緒に見に行った原作未読の友人は「後編の途中から話しの趣旨がよくわかんなくなった」と言っていたので、映画「セーラームーンCosmos」は原作未読勢にはやっぱりワケ分かんないないところもあったっぽいですが、監督のおかげで原作のgdgdだった箇所がいくつか改善されていました。
この映画で改善された点
- 原作だとスターライツは気を失ったまま敵の炎にやられてあっけなく死んでいくけど、セーラーファイ、セーラーカイに攻撃するも力及ばず、火球皇女を庇う形で死ぬという見せ場が一応用意された。
- 原作だと変身もせずにプルートの元へ駆けつけ、直後にギャラクシアに殺されるという描写だったサターンに、「変身して攻撃したけどギャラクシアには効かずに倒される」という見せ場が用意された(本気を出せば星1つ破壊できるほどの力を持つサターンの攻撃が効かないという描写で、ギャラクシアの強さがより引き立つ演出にもなっている)
- ギャラクシアのセリフは原作そのまんまだが、映画では原作には無かった彼女の過去が映像で描かれ、彼女が過去に受けた苦しみが伝わってくるようになっている。
- 原作だと小さめのコマで抽象的なイメージとして描かれるだけだった「セーラーカオスとの戦い」がもう少し具体的な映像として描かれているのでセーラーコスモスの苦悩が分かりやすくなった。
- 原作にあった矛盾する台詞が削除された(具体的には「ちびちびは危機を伝えに来たわけではない」「私は愛と正義のためなんかに戦って来たわけじゃない」といううさぎ・セーラームーンの台詞と、ちびちびがちびムーンに言った「手を出しちゃいけない」という台詞)
- 原作だとセーラーコスモスが幼女(ちびちび)の姿で現れた理由が全く語られなかったが、映画では「時空を超えた影響でほとんどの力と記憶を失ってしまったから」と語られた。
- 戦いを終えたセーラームーンが月野家に帰り、進吾(弟)や育子ママ、パパに迎えられ「日常に帰る」という、原作にはなかった場面が用意された。
1番びっくりしたのは進吾くんが登場したところです。旧作アニメでも彼の存在はRでちびうさが登場してから影が薄くなり、S編で一度登場したのを最後にそれ以降、全く姿を見せませんでしたからね。
「公式、彼の存在忘れていなかったのか」と驚きました。これも高橋監督だからこそ実現したことなのかもしれません。
ギャラクシアの過去は男性と思われる複数の影から剣で(複数回?)刺されるというなかなか壮絶な画面になっており、画面通りの意味として受け取った私は「え、これ死なない?💦」と思ったのですが、一緒に見に行った友人は「アレは性的な意味だと思う。だから彼女は地場衛(男)を操り人形として蘇らせ、靴にキスまでさせた後、蹴りを入れたんだと思う」と語っており、「あー、そういう解釈も成立するのか」と驚きました😂。身体を剣で刺されたのは文字通りの意味だったのか性的な暴行の暗喩だったのか(あるいは両方なのか)は分かりませんが、あれで彼女の心が死んだことは間違いないでしょう。
原作だとただ単にセーラームーンを挑発するために地場衛を操っていただけだと思うんですけどね💧
セーラーコスモスは原作の時点ですでにワケ分かんない存在で、「うさぎに救われたのは未来のうさぎ自身ではなく、別人にしないと意味ないがない。何故なら「平和より銀河の未来」を選択したうさぎ自身が遠い未来でその事を後悔するから結局彼女は救われていない。そもそも気の遠くなる未来まで生き続けられる時点で感情移入できないし、セーラーコスモスはすでにセーラー“ムーン”ではない」と約20年間ずっと思っていたので、「セーラーコスモス=未来のうさぎ自身」という設定そのものは変えないにしても、声優だけでも別人にしたのは英断だったと思います。
原作改善以外での「Cosmos」の見所
- S編をオマージュしつつスターライツを登場させた前編「ムーンライト伝説」のOP
- エターナルセーラームーンの変身シーンが2種類ある。前編で流れた方はCosmosオリジナル版で、旧作アニメのどの変身シーンよりエ●い🤣 後編で流れる方は「全旧作アニメの変身シーンが盛り込まれており、セーラームーンの集大成」という変身シーンになっている。筆者としては、動きが滑らかで高橋監督のオリジナルティあふれる前編ver.の方が好み。エ●いけど🤣
- ぶっちゃけ映画館で聞いても「セクシーな女性」の声にしか聞こえない男性声優:村瀬歩の演じるセーラーアルーミナムセイレーン(彼の声帯、マジでどうなってんの???@_@;)
- 原作に登場した黒いフードの占い師の姿がワイズマンなのか彼に似た別人(カオス?)なのか長い間不明だったが、映画のクレジットで「ワイズマン」と表記されていたので公式からの回答を得られた。(第2部と第5部のラスボスが過去に実は会っていたというのは面白いですね)
- 原作では小さめのコマで描かれた「ギャラクシアの過去」に登場する魚風の異星人達を巨大な画面で拝めた。
- 旧作の「スターズ編」をオマージュしつつ、新しい映像も入れた「セーラースターソング」のOP。
- (エターナル)セーラーちびムーン単体の変身シーンが用意された。
- 旧作アニメにはなかったちびちび・火球皇女の変身シーンが描かれた。
- ギャラクシアの力で蘇った仲間達を倒すことを決意したセーラームーンの表情。
- 公式から存在をほぼ忘れ去られたかのような扱いを受けていたセーラースターライツと火球皇女が令和に蘇り、映画館で拝めた。
- ギャラクシアの変身シーンと攻撃シーンの豪華な背景
- 新主題歌「月の花」
「ムーンライト伝説」はCrystal以降のセーラー5戦士が歌っているのですが、友人は「下手なアイドルよりずっと歌声や音程が合っていて上手い!」と絶賛していました。
旧作アニメの5期は映画化されていないため、Cosmos後編は映画館で「セーラースターソング」が聞けるはじめての機会でした。筆者はセーラームーンのOPとして「ムーンライト伝説」より「セーラースターソング」の方が好きなので映画館でこの曲を聞きつつ、OPのラストにエターナルセーラームーンやちびちびと一緒に画面にうつるスターライツと火球皇女が見られただけでもこの映画を見に来て良かったと思いました。
・・・しかし残念ながら、OPとして流れた「セーラースターソング」がこの映画の見所のピークでした💧
残念だった点
そもそも論、映画の原点である原作の展開が突っ込みどころ満載で、それらをいちいち指摘しているとそれだけで相当な文章量になる上に書いたところで無意味なのでそこは省くとして、この映画で残念だったところは
- PVでは旧作アニメ同様、星うさを前面に押し出していたが、結局彼らの関係は原作通り淡泊でほとんど描かれなかった。
- PVにあった「たくさんのセーラームーンの仲間達」が「セーラームーン!」と声を張り上げて彼女に手を貸す場面が、OP映像だけで本編で描かれることがなかった。
- ギャラクシーコルドロンの描写がごちゃごちゃしていて分かりづらい画面になっていた(原作はもっとシンプルで分かりやすい画面だった)
- 真っ黒な画面に巨大な赤い目が2つという敵(カオス)の演出が単調であきる💧
- 漫画では優れたように見えた演出(画面のつくり)が映画の映像としては凡に見えるところもあった(レテとムネモシュネの自己紹介シーン、死の鎌を振るうサターンを想像するセーラームーン、セーラームーンに心を開き手を伸ばそうとするギャラクシア等)。
1,2についてはPVであたかもそのような展開があるかのように期待させておいて肝心の本編では描かれないと言う時点で「詐欺くさいな~💧」と思うところですね。「いや、原作通りだって分かってんだろ。勝手に勘違いしたおまえが悪い」と思う人もいそうですが、PVで星うさや胸熱展開が描かれていた(ように見えた)ので「ワンチャン、原作が改善されてそれらの展開が見られるかも・・・」と少し期待していたのですが、悪い意味で原作通りでしたorz
お土産コーナーで会話した人も「もっと星うさが見たかった」と愚痴をこぼしていました。完全に同意ですわ~😂
また、筆者ではなく一緒に見に行った友人の感想なのですが、
「あれだとギャラクシアが救われたようには思えない。彼女が救われたという事が分かる場面を1シーンで良いから描いて欲しかった」
との事です。
これは、ギャラクシアの過去を映像で深掘りしたことで、かえって原作の粗を浮き彫りにしてしまったのかもしれません。(旧作アニメだとギャラクシアが救われたという事が子供にもちゃんと分かる描写になっていました。原作漫画だとギャラクシアの過去は深く語られないため、中途半端な救われ描写でも悲壮感はありませんでした)
まとめ
そんなわけで、監督は色々頑張ってくれたけど悪い意味で原作通りだったセーラームーンCosmos。
筆者はスターライツや火球皇女の出番が多かった前編の方が楽しめました。90年代には実現しなかった、「スターライツや火球皇女、ちびちびを映画館で見る。セーラースターソングを映画館の音響で聞く」ということが実現しただけでもCosmosの前後編を見た甲斐がありました。
映画の内容とは関係ないですが、入場者特典がEternalより豪華になったのも嬉しいですね~。
この胸熱展開を映画本編で見たかったんだよ!
どうしてOPだけなんだよ!?
原作の内容をねじ曲げてこの展開を描いて欲しかったよ~!!!!!!(号泣)
・・・まぁ、それをやったらやったで原作派のファンは「原作と違う!」と怒るのかもしれませんし、本編で描けないならせめてOPだけでも描いてくれただけでも高橋監督には感謝してますけどね。
※画像はyoutubeで公式が公開しているPVより引用