真の主役はDr.ヘド!? 映画ドラゴンボール超スーパーヒーロー ネタバレ感想
前提
はじめに断わっておくと、私はドラゴンボールについてあまり詳しくはない。
原作も読んだことがないし、アニメも「ドラゴンボール改」セル編の後編から見始めた。
映画も「神と神」以降の作品しか見たことがない。(神と神以降は本作含め全部見たが)
そんな奴の感想文であることをご了承頂きたい。
スーパーヒーローの正体
往年のファンの方達はこの映画について「ピッコロと悟飯が主人公」だと思われたらしいのだが、過去作にあまり詳しくない私は「表向きの主人公は同二名だけれども、裏というか真の主人公はDr.ヘドかな」という印象を受けた。
Dr.ヘドは本作のヴィランで、ドラゴンボール過去作に登場したDr.ゲロの孫である。
完全な悪人だった祖父Dr.ゲロとは対照的にDr.ヘドは正義のヒーローに憧れているのだが、その反面、自分をいじめてきた相手を躊躇なく殺すなど冷酷な一面も持ち合わせている少年だ。
そんな彼は、世界征服を目論むレッドリボン軍の総帥、マゼンダに「地球を支配する悪い宇宙人達(=孫悟空達)を倒そう!」と騙され、強い人造人間を造る研究資金を貰うことを条件にレッドリボン軍に加わる。
物語に必要な条件は「主人公の成長」であり、そのために必要な要素の一つが「主人公が自分の過ちに気づき、改心すること」である。
本作で最も改心(=成長)した人物はほかでもない、Dr.ヘドなのである。
彼はレッドリボン軍に加わった後、二種類の人造人間を造り出した。一つは、「正義のヒーローを造りたい」と願う彼の良心の化身(メタファー)であるガンマ1号&2号である。
もう一つは、「悪い事だと薄々気づきつつ、研究費欲しさにレッドリボン軍に加担してしまった」彼の悪い心の化身(メタファー)であるセル・マックスである。
つまり、ガンマ1号&2号、Dr.ヘド、セル・マックス、この三者は別人の皮を被った同一人物なのである。
ファンの方はピッコロと悟飯の師弟関係が再び描かれたことに胸熱だったらしいのだが、過去作にあまり詳しくない私は彼らのやり取りより、レッドリボン軍に騙されていたガンマ1号&2号とDr.ヘドが自分達の過ちに気づき、ピッコロ達と和解したり、暴走したセル・マックスを止めるために戦ったりした場面の方が感動的だった。
本作のサブタイトルは「スーパーヒーロー」だが、作中でそう呼ばれたのはピッコロでも悟飯でもなく、ガンマ2号だった。(彼をそう呼んだのはピッコロだが)
ガンマ2号は暴走するセル・マックスを止めるために自爆特攻を仕掛け死んでしまう。(ピッコロはそんな彼の雄姿を「スーパーヒーロー」だと評価したのである)
これは「自己犠牲こそが正義なんだ」というやなせたかしの哲学を取り入れたのかもしれない。
本作で描かれた「スーパーヒーロー」の正体は、「自己犠牲のヒーロー」だったのである。あるいは、「自分の悪しき一面を認めて立ち向かうヒーロー」だったのかもしれない。
しかし、彼はあくまで2号であり、片割れである1号はDr.ヘドを守るために生き残った。
ガンマ2号の自爆特攻で弱体化したセル・マックスはピッコロに潜在能力を引き出された悟飯によって倒された。
これらは、自らの過ちに気づいたDr.ヘドが自身の悪い心に打ち勝ち、良心だけが残ったことのメタファーだと思われる。セル・マックスの消滅とガンマ2号の死を見届けた彼は自分の過ちを認め、ガンマ1号と共に警察に出頭することを申し出た(ピッコロ達の助言で結果的に警察に行くことはなかったが)
本作でピッコロと悟飯の師弟関係が再び描かれた事について「嬉しいが華がない」と語っている方もいたが、本作に「華がない」と感じたのであればそれは、彼らの師弟関係が地味だからではなく、本作で最も成長した実質的な主人公が「Dr.ヘド」という見た目の地味なヴィランだったからではないかと思う💧
念のため補足しておくと、一応悟飯にも「育児も修行もほったらかしにして仕事な没頭していたが、今回の一件で娘と修行の大切さを思い出した」という心情の変化はあるのだが、Dr.ヘドの成長と比べるとどうにも印象が薄い。
Dr.ヘドが「正義のヒーローを造る事に憧れているが、研究費欲しさに悪の組織に加担してしまう」という人間の業というかジレンマを感じさせるキャラ造形だったこともあり、本作は私が見たドラゴンボール映画の中では最も面白かった。
もしかしたらそういうキャラ造形自体は特別珍しくもないのかもしれないけど、上述の通り彼の良心と悪い心のメタファーの描き方が分かりやすくて面白かった。
難点を述べるなら、セル・マックス戦が長くて途中で飽きてしまった事かな。
前作のブロリー一味も登場し、製作側がキャラを大事にしている事が感じられたのも良かった。
まとめ
本作の実質的な主人公はDr.ヘドではないかと思われる。
その理由は、彼が本作で最も成長(心情の変化した)キャラに見えることと、サブタイトルにもなっている「スーパーヒーロー」と呼ばれた存在が彼の良心の化身であるガンマ2号だったことである。
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